はじめてのノー・フォルト・ゾーン

『ノー・フォルト・ゾーン・ゲーム』は、その創始者マーシャル・ローゼンバーグから学んだ「非暴力コミュニケーション(NVC)」を基盤としています。
私たちは、インドの哲学者J・クリシュナムルティが設立した学校で教師として働いていた1988年、マーシャル・ローゼンバーグと出会い、非暴力コミュニケーションを学び実践し始めました。
マーシャルが細部まで心を砕いて構築したこのコミュニケーションのプロセスの中に、私たちは、教師や親が自分自身と、子どもたちとともに、誠実に、そして思いやりを持って生きるための、力強く効果的なサポートを見出しました。 

非暴力コミュニケーションを学び実践する中で、私たちはこのプロセスを大人と若者にとってより実践的で、視覚的で、楽しく体験できる形にできないかと探求するようになり、その結果として、2006年に米国で『ノー・ファルト・ゾーン・ゲーム』が誕生しました。
そしてこれを書いている2025年現在、このゲームは世界中に広まり、中国、香港、インドネシア、ニュージーランド、ノルウェー、デンマーク、スペイン、フランス、ドイツ、トルコ、モロッコで翻訳され、制作されてきました。そして今、日本にも届いたのです!実穂とゆかりが『ノー・フォルト・ゾーン・ゲーム』の日本語版制作に注いだ情熱、配慮、そして努力に感謝しています。

Sura Hart

私たちは、非暴力コミュニケーションの2つの基本原則を視覚化するために、感情温度計と選択カードを作りました:
1)私たちは常に自分の世界に対して反応しています。
2)そしてどう反応するかは常に自分で選ぶことができます。

ゲームのプロセスは「感情の温度計」から始まります

ゲームマットの下の方にある横長の帯が感情の温度計で、あらゆる状況での私たちの内面の状態を視覚化します。

この「感情の温度計」は、出来事に対する私たちの身体の自動的な反応を観察する手助けになります。

• もし体が静かで集中できる時は、感情の温度計の真ん中にある「落ち着いて気づいている」のところにコマを置きます。

• もし感情的にヒートアップしていたり、緊張や興奮を感じていたり、心拍が早くなったり、集中や静かしていることが難しい時は、「落ち着いて気づいている」から「沸騰している」の間にどこかにコマを置くことができます。これらの体感覚は、私たちが過度に興奮したり、かき乱されたり、もしかしたら怒りを感じ始めているサインかもしれません。

• もし気持ちが冷めていたり、眠気や疲れを感じていたりする時は、コマを「落ち着いて気づいている」と「凍りついている」の間に置くことができます。これらの感覚は、私たちがシャットダウンしたり、無感覚になったり、状況から距離を置いたり、あるいは極端な場合はうつ状態にあることを示しているサインかもしれません。

これら情報を手がかりに、感情カードとニーズカードを使って、自分の感情とニーズを知り、自分のたった今の内なる状態を明確にしていくことができます。

選択カード

「選択カード」は、どんな状況でも私たちは常に選択をしていることを思い出させてくれます。例えば、非難する、怒鳴る、批判する、と言ったような選択は、つながりを断ち切ったり、争いや衝突を招き入れたりして、「フォルト・ゾーン」に私たちを連れていく傾向があります。 一方で「感情やニーズとつながる」、「評価を含まない観察をする」、などの選択は、つながり、明確さ、理解へと導いてくれることが多いです。このゲームの中では、自分がどこへ行きたいかに応じて考慮できる両方の種類の選択が用意してあります。
選ぶのはいつだってあなたですから!

ノー・フォルト・ゾーンとフォルト・ゾーン

このマットには、自分のインナーシステムを示す『ノー・フォルト・ゾーン』と『フォルト・ゾーン』があります。大きな二つのゾーンの中で今何が起きているのかを知る手助けとなるのは、視点や意識をどの方向に向けているのかを意識すること。心の中で自分の中に起きていることを探る、自分の大切なことを満たすこと、他者とのコミュニケーションの中でどうしたらお互いを大切にしあえるのか、その方法を探す過程をわかりやすく見せてくれます。(毎日の生活の中で気楽に取り出して、使って見て欲しい道具です:)

ノー・フォルト・ゾーン

ノー・フォルト・ゾーンは色合い豊かで、身体的にも精神的にも社会的にも生き生きとしていて「幸福」な場所!

自分のニーズを満たし、他者のニーズを大切にし、持続可能で平和な世界を築くための最も有効な場所です。私たちはいつでもノー・フォールト・ゾーンに意識を向ける選択をすることができます。
ここは次のフィールドから成り立っています。

  • 落ち着いて気づいている(Calm Alert)
  • 選択(Choices)
  • 観察(Observations)
  • 感情(Feelings)
  • ニーズ(Needs)
  • リクエスト(Requests)
フォルト・ゾーン

マットの白黒のゾーンはフォルト・ゾーンです。「「白か黒」の考え方(B&W Thinking)」を表します。「白か黒」の考え方は分断や不信感を生み出すことが多く、争い・口論、対立を引き起こしがちです。この「白か黒」の考え方には、以下のような思考パターンが含まれます。

  • 「〜すべき」思考(Should Thinking)
  • 不満を言う(Complaining)
  • 非難する(Blaming)
  • ラベリング(Labeling)
  • 強要する(Demanding)
  • 悪者探し・粗探し(fault-finding )
  • 「すべてか無か」の妥協を認めない絶対的な考え(All or Nothing Thinking)
  • 「~すべき」思考(Should Thinking)
フォルト・ゾーンの選択カード
腹を立てる 
Get Angry
怒りは高まった感情や思考が混ざり合ったもので、しばしば対立を助長します。
多くの人は怒っている時には本当に言いたいことではないことを言ったりしたりして、後から後悔します。
怒っている時は、たいていの人は2つの選択肢しか見えていません:怒りを行動に移すか、我慢するか。
私たちは3つ目の選択を学ぶことができます:怒りを解読し、内側に埋もれているニーズを見つけることです。
言い訳をする・叫ぶ・怒鳴る
Make Excuses/Yellake Excuses/Yell
正直さを受け取ってもらえるという安心や信頼を感じない時、攻撃されるのではないかという恐れの大きい時にとりがちな行いです。
視点が外側に向いている状態です。
無視する・心を閉ざす
Ignore・Shut down
恐怖から逃げることができず目を向けるのも辛いような時や、感じることが痛みを伴う時に、何ごともないかのようにすること、固まることで、危険から身を守ろうとする状態です。
強要する
Demand
愛他の人に何かしなさいと言うのが強要です。従わない場合には罰を与えようとします。
リクエストをする代わりに何かをさせることに視点が向いています。
非難する・文句を言う
Blame・Complain
「誰が正しく、誰が間違ってる」を決めようとすること。「〜すべき、〜すべきでない」と言う考えです。
実際に起きていることを観察したり、自分のニーズを見るより、非難する人を探すことや他の人がすべきことに視点がある状態です。
ノー・フォルト・ゾーンの選択カード
問う:お互いのニーズを満たすものは何だろう?
Ask, What could meet both our Needs?
問う:お互いのニーズを満たすものは何だろう?
どちらか一方のニーズを犠牲にして、もう一方だけのニーズを完全に叶えることはできないという視点を教えてくれます。
お祝いする
Celebrate
喜びや幸せが指し示してくれる満たされているニーズををそのままに十分に味わうこと。
一人でお祝いする、誰かとお祝いを分かち合う、どちらもできます。
嘆く
Mourn
悲しみや寂しさや苛立ちなどが指し示してくれる満たされない大事なニーズとともにいること。どれだけそれが大切なのかを抱きしめるように。そのニーズがどれだけ美しく、愛おしく、暖かいものかを十分味わうこと。一人で嘆くこともできるし、他の人と嘆きを分かち合うことも嘆きの助けになることがあります。
感情の温度をチェックする
Check my Feeling Thermometer
自分の感情が均衡の取れた状態(「落ち着いて気づいている」)なのか、そこから離れた状態(「沸騰している」のか「凍りついている」のか)なのかを知るのに役立ちます。自分の感情の状態に気づけば、自分のエネルギーの状態をシフトさせる方法を見つけ、落ち着いて気づいている(均衡の取れた)状態に行けるようにすることもできます。
自分の感情とニーズにつながる
Connect with my Feelings and Needs
自分の内側に意識を向け、カードを使って、自分の感情とニーズを見つけます。マットに置いてその感情とニーズを味わいます。
相手の感情とニーズにつながる
Connect with their Feelings and Needs
相手の内側の世界に心を開き、相手の感情とニーズを想像しそれと思えるカードを見つけます。マットに置いて相手の感情とニーズを味わいます。
「落ち着いて気づいている」状態へシフトする
ENERGY SHIFT to Calm Alert
*シフトを促すいくつかの方法を下記に記載しています。参考にしてみてください。
観察をする:何が見える?聞こえる?覚えている?
Make an Observation: What do I see, hear, remember?
ビデオカメラになったつもりで、ある状況の事実を探します。ビデオカメラが記録できることだけを言うことに努めます。
観察には、評価や解釈、ストーリーを入れないように努めます。例えば、「挨拶もせず、無視したのは、ものすごく失礼だ」と言う代わりに「あなたがドアから入ってきた時、私はあなたが挨拶するのを聞かなかった。」
時間をとる 
Take a Time In
今していることを一旦置いて、時間を取ります。
その場を一旦離れる、沈黙の時間をとる、深呼吸する、などの例があります。
リクエストをする
Make a Request
リクエストとは、具体的で、肯定的で、実行可能な行動です。
「もっと礼儀正しくしていただけませんか?」は具体的でなく実行可能でもありません。「私が話し終えるまで、話すのを待っていただけませんか?」は具体的で実行可能です。
自分のニーズが明確で、それを満たすための方法がわかっているなら、そのまま自分自身や他人にリクエストをすることができます。
それが本当にリクエストなのかもしくは強要なのかを判断する鍵となる質問は、
「いいえ」を聞く準備がありますか?、そしてその 「いいえ 」の背後にある感情やニーズに心を開き耳を傾けるつもりがありますか?
リクエストではなく強要をすると、自分のニーズをうまく満たせる可能性はだいぶ低くなります。

「落ち着いて気づいてる」状態になるためのいくつかの方法を紹介します

「ハートの呼吸」 

エネルギーをシフトする

1. 感謝していること、笑顔になるものを考えてください。ペット、人、木、花など、何でも構いません。 

2. 心地よく座り、目を閉じ、リラックスしてください。 

3. 5回ゆっくりと呼吸をします。

4. 手を胸の真ん中に置きます。 

5. 笑顔になる人、ペット、植物を想像します。感謝のエネルギーを吸い込みます。この感覚を手の下にあたりに呼吸で送り込みます。 

6. さらに5回ゆっくりと呼吸します。この文章は段落ブロックで作成したダミーです。文字の表示を確認するために配置しています。
(ハート・ロック・イン・アクティビティ(ハートマース)を基に作成。ドック・チルドレ氏による。www.heartmath.org)

「クロス・クロール」

バランスをとる・安定をもたらす

1. 両足に体重を均等に分散させて真っ直ぐ立ちます。 

2. 右腕と左足を同時に上げます。 

3. 右腕と左足を下ろしたら、左腕と右足を上げます。

4. この動きを繰り返しながら、脚の上げと腕の振り幅を大袈裟にします。

5. この大袈裟な動きを、できるだけゆっくりかつ滑らかに続けます。この間、鼻から深く吸い込み、口から吐き出します。

(ブレイン・ジム(教育キネシオロジーとも呼ばれる)。ポール・デンニソン博士によって開発されました。 www.braingym.com)

「手首振り」

活力をあげる・安定をもたらす

1. 足を肩幅に開き、つま先側で立ち、体重を主に足の裏の前の方にのせます。膝を軽く曲げ、リラックスした状態を保ちます。 

2. 腕を体の横に下ろし、手をとても速く振ります。その動きでかかとが軽く上下に跳ね上がるようにします(約20秒間)。 

3. 振りを止め、ただ立って、体の感覚をしばらく観察します。どんな感覚に気づきますか?

(合気道(合気道は、植芝盛平(1883-1963)によって創設された非暴力の武道です。世界和解の道であり、人類を一つの家族として結びつけ、戦争や紛争を避けるためのものです。)

ノー・フォルト・ゾーン・ゲームを使って心を落ち着ける

—1ラウンド−
1. マットの感情の温度計の「沸騰している」から「凍りついている」の間にコマを置き、今の自分の気持ちがどれくらい熱いか冷たいかを示します。

2. 感情の温度がとても熱い、またはとても冷たい場合は、1分間ゆっくり深呼吸をする、少し歩く、または記載されている他の方法や自分の方法を使って感情の変化を促します。

3. 変化を感じたら、コマを感情の温度計上に今の新しい感情の状態を示す場所に移動します。

4. あなたの状況について、評価を交えずに観察してください:

私が・・・・を見たとき、聞いたとき、思い出したとき。

5. マットの上に、あなたの現在の感情と一致する感情カードを置きます。

6. あなたのたった今のニーズ(満たされているもの、満たされていないもの、どちらであっても)を指すニーズカードをマットの上に置きます。

7. 感情の温度計をチェックし、あなたの感情が再び変化したかどうかを確認します。

 −2ラウンド−

1. 今ある感情を特定し、感情カードをマットの上に置きます。

2. あなたの今のニーズを特定し、ニードカードをマットの上に置きます。3. 感情の温度計をチェックし、感情が変化したかどうかを確認します。

4. 落ち着いて気づいている状態になるまで、これを続けます。